蔵前にて。対談 広瀬琢磨(カキモリ代表) × アライリエコ(SOL'S COFFEE代表)

蔵前にて。対談 広瀬琢磨(カキモリ代表) × アライリエコ(SOL'S COFFEE代表)

SOL'S COFFEEは、同じ蔵前のご近所にある文具店カキモリとコラボレーションして、コーヒーをご提供します。

 

今回はカキモリ代表の広瀬琢磨さんと、SOL'S COFFEE代表のアライリエコが蔵前にてお話ししました。

 

 

SOL'S COFFEEとカキモリの出会い、蔵前にて。

広瀬 琢磨 (以下、文中 広瀬):カキモリは2010年の11月に蔵前でオープンしたんですよね。その当時から基本のコンセプトは一緒で、「書くきっかけを作る」と。その時のフックはオーダーノートしかなかったんですよね。

 

蔵前、文房具店、オリジナリティーを考えた結果、フックのあるなにか、それはこの地域の職人を生かしたものを作ろうと。だから最初はオーダーメイドじゃなくて、一冊のノートから始めようというコンセプトだったんですよ。

 

そして、よくよく考えたらオリジナルのカキモリの一冊よりも、お客さんの一冊の方がいいねってなって、オーダーメイドのノートになったっていう。それで2010年にスタートした感じですね。

 

 

アライリエコ(以下、文中リエコ):わたしたちSOL’S COFFEE2013年に蔵前でオープンしました。

 

 

広瀬:それは蔵前のSOL'S COFFEE STANDでしょ。新小岩店はもっと前だよね?

 

 

リエコ:そうです。新小岩のSOL’S CAFE2010年にオープンしましたね。会社は2009年から移動販売をはじめました。

 

 

 

広瀬:あっ!1年負けた!

おれ、新小岩のお店は一回だけ行ったことある。

 

 

リエコ:写真が残ってます。自転車で広瀬さんが新小岩まで来てくれましたね。蔵前の人で新小岩のSOL’S CAFEまで来たのは広瀬さんだけかも。

 

 

ーおふたりが初めて出会ったのはいつなんですか?

 

 

リエコ:2013年の最初のモノマチの会合じゃないですか。2013年の4月に蔵前のSOL’S COFFEE STAND店ができて、モノマチにエントリーして。けっこう飲み会も多くて。

 

 

広瀬:あの頃が一番多かったかもなあ。だってモノマチは毎週飲み会に行ってたもんね。

 

 

リエコ:行かなきゃいけないムードがあった。

 

 

広瀬:2013年だと、カキモリはちょっと知られてきた時ですね。三年目で。

 

 蔵前が盛り上がりはじめるまだちょい手前ですよね。みんなでモノマチを作ったりしていったところだから。

 

 SOL’S COFFEE STANDができたばかりの時にカキモリの初期メンバーのひとりがコーヒーを飲みに行ったんですよ。

 

帰ってきて「薄味でした!!!!全然わからない!」って言ってて。

 

 

 

 

はじめてのスペシャルティコーヒー

ースペシャルティコーヒーを日本にもっと知ってもらおうというTYPICACulture Paring Popupを開催するにあたって、SOL’S COFFEEにいつも飲みにきてくれている広瀬さんの顔が思い浮かびました。

 フルーティーな香りのコーヒーに対してとてもポジティブな広瀬さんですが、スペシャルティコーヒーを初めて飲んだ時はどんな印象でしたか?

 

 

広瀬:スペシャルティコーヒーをはじめてちゃんと飲んだのはSOL’Sかもしれない。

 

清澄白河にブルーボトルコーヒーができたのって、もっと後だよね。

 

 

リエコ:清澄白河のレセプションに蔵前のみんなで行ってましたよね。

 

 

広瀬:SOL’Sを初めて飲んだときに、酸っぱいとは思わなかったけれど、やっぱり「薄い」とは感じた。それは舌が完全に深煎りに慣れてたから。

おれだって、インスタントコーヒーからはじまり、喫茶店に入ったり。コーヒーのチェーン店に行って、これが基本なのかな?と思ったり。スターバックスに行ったり。

そういう基準だったから、SOL’S COFFEEを初めて飲んだ時は、あんまりその価値はわからなかったですよね。

 

 

リエコ:物足りない感じだったかもしれない。

 

 

広瀬:ただ、数回飲んでいくうちにだんだんそっちに慣れてきたら、逆に深煎りや濃いコーヒーがキツくなってきて。洗脳されていったというか。舌が。

 

 

リエコ:広瀬さんは海外にもたくさん行かれてるじゃないですか。海外でもスペシャルティコーヒーを飲みますか?

 

 

広瀬:今はね。もちろん。

深煎りだとしてもスペシャルティコーヒーじゃないとちょっと。台湾に行っても、ポートランドやブルックリンに行っても、スペシャルティコーヒーのお店に行きます。逆にそうじゃないお店にわざわざ行かないよね。

 

 それでも、アメリカでダンキンドーナツのコーヒーを飲んだ時は「これがアメリカだ!」って。衝撃的でした。

 

 そういうアメリカの土壌で育ったブルーボトルなどのスペシャルティコーヒーと、日本の深煎りの文化の中で育ったスペシャルティコーヒーのSOL’S COFFEEと。またちょっと違うのかな?って。

 

 おれにとってはSOL’S COFFEEが心地よいのかなって。

 

 うまいのか?おれが慣れてしまったのか。

 

 

リエコ:蔵前にKONCENT×SOL’S COFFEEがあった2017年のころ、朝は屋台でコーヒーを出していました。当時はなかなかフルーティーな中煎りのスペシャルティコーヒーが売れなくて。

どうしても店頭でコーヒー豆があまっちゃうので、KONCENTでは朝だけ屋台で200円でコーヒーを提供していましたね。

その頃も広瀬さんは毎朝きてくれていました。

 

 

広瀬:あの時はアクセス的にも会社に行く途中にあって。サイズアップが250円で飲めた。あれで洗脳されたのか・・・。

 

 

リエコ:コスタリカのブラックハニーやエルサルバドルのナチュラルなど、高価なコーヒー豆が250円で。SOL’S COFFEEとしてはかなりの投資?!?!でしたね。

 

 それでもあの時の屋台でファンになって、今だに通ってくれているお客さんがたくさんいます。

 

 

広瀬:それだけ時間がかかるものなんだと思う。お客さんを変えていくっていうのは。

 SOL’S2013年に蔵前のSTANDKONCENT2015年に浅草橋のROASTERY店ができて結局「コーヒーの街」って根付くのに10年くらいかかっているっていうことだよね。

 蔵前ではSOL’Sが起点になってスペシャルティコーヒーにお客さんが気づきはじめて。蔵前の土地に需要が生まれたあとに、その需要でたくさん他のコーヒー屋ができてきたという。

 

 

リエコ:せっかく投資して耕したのに!!

 

 

 

美味しいコーヒーの街の真実 

ー蔵前は今や「コーヒーの街」と言われています。おふたりは実際の10年前の蔵前と今の蔵前を知ってらっしゃるので、実際「コーヒーの街」はどんなだったのか教えてください。

 

 

広瀬:10年前の当時はドトールかマクドナルド。あと老舗の喫茶店にたまに行ってました。コーヒーを飲むといったらそういう感じでした。まだコンビニコーヒーもなかったし。

 

 

リエコ:わたし、競争の激しいレッドオーシャンのエリアではお店をやらないっていうポリシーを大事に持っているんですけど。

 

 

広瀬:それは蔵前の人たちはみんなそうです。絶対レッドオーシャンには行かず、ニッチでいいと思う。

 

 

リエコ:だからコーヒータウンのパイオニアって言われても何も嬉しくないですね!

 

 

広瀬:でもパイオニアじゃない?!

 

 

リエコ:パイを取り合ってる感じ!パイはパイでも!

 

 

広瀬:10年前はコーヒーの街っていう要素はほぼなかったよ。

 

 

リエコ:蔵前がブルックリンって言われはじめたのもその頃ですか?

 ブルックリンって言うな!って怒ってる先輩もいた!下町は下町なんだから比較するなって。

 そもそも蔵前はものづくりの人たちが多い街で、色んなショップがあって、工房があって、その間にコーヒー屋さんがあるという感じがします。

 

 

広瀬:あとはこの10年で浅草橋、蔵前や御徒町あたりはオフィスや問屋街だった街から、外からお客さんがやって来る街に変わってきたということ。観光客とか、買い物に来るお客さんとか。

 

 

リエコ:それでいったらカキモリさんは10年前から外からお客さんを呼んできているお店ですよね。

 

 

広瀬:そう。うちはそもそも外からくる人がいないと困る。外からくるお客さんが増えると必然的に飲食店が求められて。

 

 その街の奥行きというのは飲食店でかなり変わって来るから。

自分が旅行して他の土地に行ったときも思うよね。

地元の人、プラス外からくる人が増えて、奥行きのある適格なお店が増えはじめたのかな。

 

 でも最初はお客さん少ないから!

 

その時に耐えてたのは・・・

エライ!

われわれはガンバった!!!

 

 

リエコ:最初の頃は、土日にお店開けてたのを地元の人たちに変に思われてた。「この辺り土日は人いないよ」って。今は土日の方が断然集客ありますよね。

 

 

広瀬:たくさんの人が歩いているよね。でも街自体の土日の集客が増えるにつれてカフェが増えているのは必然的にわかるんだけれども。

 

それにしても、蔵前はコーヒーロースタリーがたくさん増えているというのがおもしろい。街の大きさに対してロースタリー(コーヒー焙煎所)が多すぎだろ!っていう。

 

 

リエコ:それはそうですね!

 

 

広瀬:例えば北海道、札幌でコーヒーロースタリーを調べても全然数は少なくて。もちろんカフェやコーヒースタンドはたくさんあるんだけれども、焙煎しているところはそんなにない。

蔵前みたいな小さい街にこんなにコーヒーロースタリーが密集している街は珍しいんじゃないか。この辺は自分たちでチャレンジしている人が多いのかな?

 

 

リエコ:そう言われてみれば。焙煎所も多いんですけど、蔵前っていう街にはカキモリさんみたいにノートを作る機械が見えたり、作っているところも見れるお店が多いですよね。

作っている人が見えるっていうのがこの街の良さですよね。

 

 

広瀬:ショップに併設されている工房がたくさんあって、たまに周りの職人が納品に来るのを見れるよね。

 

たとえば昨日、SOL’Sに行ったときに見たんだけど、トラックから生のコーヒー豆の麻袋の納品があるじゃない。あれってロースタリーじゃなかったら絶対ないから。

 

あれって実は、けっこういい絵だなって思って。

 

当たり前のようだけど、自分たちで焙煎していなかったらあの光景って見られない。

 

 

 

リエコ:コーヒー豆の麻袋を1袋仕入れられるようになるのも時間がかかりました。

 

 

 

広瀬:ものづくりっていうのは、アウトプットがこういうモノじゃなくてもいい。もちろん食品だっていい。この街はきっとプロダクトを01(ゼロイチ)で作っている人が多いんじゃないかな。

 

 

リエコ:確かに。01(ゼロイチ)の街ですね。そういうムードに惹かれてコーヒーロースタリーがたくさん集まったのかもしれませんね。

 

 

広瀬:1から10にするのはみんなヘタっていう!ね。

01(ゼロイチ)で止まる!!

 

 

 

リエコ:いやいやいや!広瀬さんがそれ言ったらマズイでしょ!1から100やってる人なんだから!!!

 

 

広瀬:それをやるには人を巻き込んでいくしかないな・・・。

 

 

 

 

 

楽しく、書く人。コーヒーのある暮らし

 

リエコ:コーヒーのある暮らしっていうのをなぜ考えているのかというと、暮らしのなかのコーヒーのハードルをもっと下げたい。そして多角的にコーヒーに携わりたいと考えています。

 

 

 コーヒーを使ったプロダクトや、コーヒーに携わるプロダクトを作ったり。コーヒーを飲みながら手紙を書いたり、手紙とコーヒーっていうのは親和性があるんじゃないかと考えて「お手紙コーヒー」っていうハガキサイズの一筆書けるコーヒー便を構想したり。

 

そういうライフスタイルを提案できるような会社になりたいなと思っています。

 

 

広瀬: コーヒーもかなり多様化してるじゃないですか。この味を極める!この味や蘊蓄を語って緊張しながら飲むコーヒーがあってもいいけど、SOL’Sはもうちょっとカジュアルに毎日美味しく気軽に飲めるっていうところにあって。

 

カキモリも、文房具も・・・深みにいっちゃいそうになるんですよ。

 

 

リエコ:ああ、茶色い方に・・・コーヒーもです。

 

 

広瀬:深みにはまることを「沼」とも言うのだけれど。文房具沼とか、インク沼とか。

 

カキモリはスタッフも文房具好きだから「文房具沼」に行きがち。もっとふだん書かない人、書かなくなっちゃった人とか、文房具に興味がない人に興味を持ってもらえるように提案していきたいと思ってます。

 

そういう意味では分野は違うけれど、SOL’S COFFEEの打ち出す方向性とカキモリの方向性は近いところにあるのかなと思って。強引に結びつけようとしているけど。

 

多様でも、なんでもいいわけじゃないじゃん。SOL’Sでやっちゃいけないことってなんなの?

あれだよね。押しつけないからいいよね。

 

 

リエコ:押しつけない。

 

こういうのが美味しいんだ!これが正義だ!っていうコーヒー屋さんは、ほかに探せばあるので。うちは押し付ける営業はしちゃいけない。

 

わたしたちのラインナップの中からあなたが飲みたいものを一緒に探しましょうという姿勢でやっています。

 

SOL’S COFFEEのミッションは「セレンディピティ体験を通してお客様理想の一杯をご提案する」というものを掲げていて。

 

セレンディピティとは偶然に幸せを発見する才能という意味です。押しつけるんじゃなくてお客さまと「ああ、これが飲みたかった」っていうものを探していこうという姿勢でいます。

 

 

広瀬:うちは「楽しく書く人を世界中に広める」という方針でやっていますね。

 

いや、あのね、なんでこんなこと言ってるかというと、

「コーヒー飲みながら書く時間」みたいなコンセプトは毎度同じになっちゃうから。なんかそうじゃないものを見つけたい。

なんか他にもあると思うんだよね。大体、「コーヒーと書きもの」っていう切り口でイベントをやるとなんか全部同じになっちゃうんだよ。 

 

リエコ:なるほど!挑戦的です!

 

 

広瀬:なんかないかなあと。コーヒーと書きものっていうだけだとイメージがわかりやすすぎて。

 

そのかたちだと結局「クラシックな書斎でコーヒーを飲みながら手紙を書く」っていうイメージに行き着いちゃう。でもそれってリアルにやんないよね?

 

「書斎でコーヒー飲みながら手紙書く、素敵でしょ」みたいな打ち出し方はリアリティーがない。もっとリアリティーあるところに落とし込めないかなって。

 

 

リエコ:ちょっと書くのが憂鬱なことでも、カキモリのペンとか、コーヒーが一緒にあればちょっとテンション上がるようなこととか?

 

 

広瀬:書くことが憂鬱なこと。そう。今、多分そうなんだよ。

 

 

リエコ:カップやスリーブにメッセージを書くとか。SOL’Sto go cupに一筆書いて渡したり。もうこれからは100%手書きで渡す!

 

 

広瀬:そういうのいいですね。うちもスタッフへの手紙はコーヒーカップにしようかな・・・

 書くこととコーヒーはコミュニケーションをスムーズにするきっかけになるよね。

 

 

 

GUATEMALAとナディーンさん

123日、4日にCulture Paring Popupで実際にご提供するコーヒーはグアテマラのラ・コリーナ農園のコーヒーについてお聞かせください。

 

リエコ:コーヒー業界っていうのは未だに男性優位な業界で。

結構コワモテなロースターやボスタイプが多いんです。

その中でもグアテマラのプリマヴェーラコーヒーのナディーンさんはそういうイメージとは違って、とても小柄な女性。すごく柔らかい印象の方で。

 

この人がグアテマラの300軒近くある農家を取りまとめているとびっくりしましたし、先月初めてお会いしてお話しできて感激しました。

優しくて笑顔が素敵な人でした。

https://typica.jp/nadine-presen/

 

SOL’S COFFEEのグアテマラは、スペシャルティコーヒー業界の中では割と深い焙煎なんですけれど、去年のロットのカツーラ種のスタンダードな中深煎りと、今年のパカマラ種、ちょっとだけ浅い焙煎の柑橘のような香りのニュークロップです。

 

全く同じ農園の品種と収穫したクロップが違うコーヒーを皆さんにご紹介します。

 

 

広瀬:でも飲み慣れていない人にはそれでも浅く感じるかもしれないよね。

 

今回のイベントは完全に蔵前の外から来るだろうし、今週末は外国のお客様も多いだろうし。

 

SOL’S COFFEEが蔵前で接してきた人たちじゃない人たちに、どう受けるのかというのは楽しみですね。

 

 

リエコ:SOL’S COFFEEのスタンダードな味をカキモリさんでご紹介させてもらえるのはとっても嬉しいです。みんなタダで飲めるからね!

 

 

広瀬:お砂糖ミルクはなくてもいいんじゃない。タダなんだから。そこはストレートで飲んでもらおうよ。スペシャルティコーヒーに慣れてもらって。

 

 

リエコ:苦手だったらお湯で割って。薄く感じるかもしれないけど!

 

楽しみです。よろしくお願いします。

 

 

広瀬:よろしくお願いします!

 

(2022年11月30日 カキモリにて。文中敬称略 )

写真 大参久人 

 

 

TYPICA Culture PairingPop-upでは世界中の生産者から直接とどいた生豆を日本中のロースターが焙煎し、全国各地の個性豊かなショップでポップアップを行っています。

お一人様、一杯まで無料で体験いただけます。
旬のダイレクトトレードコーヒーをぜひ味わってください。



開催期間:12月03日(土)- 12月04日(日)

午前11時から午後5時まで

【開催場所】

Kakimori
東京都台東区三筋1-6-2

https://kakimori.com/

ロースター
SOL'S COFFEE

生産者
Primavera Coffee

https://typica.jp/nadine-presen/


グアテマラで300の小規模生産者と関わるスペシャルティコーヒーのエクスポーターPrimavera Coffee。アメリカとオランダにも拠点を構えるインポーターでもある。2014年、同社を創業したのが、無邪気に笑う少女のような雰囲気を持つNadineだ。起業家の血を受け継ぐ彼女は、業界の牽引役にもなっている。

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